コロナ禍にゴルフ業界は活況を呈しています。新型コロナウイルス感染症の拡大が始まってから約1年半、ゴルフは感染症に強いアウトドアスポーツとして認知され、20~30代の若い世代やこれまでゴルフをしたことがない壮年世代が続々とゴルフデビューを果たしています。
振り返れば、筆者の時代(1990年代)はゴルフを始めるにはハードルが高い時代でした。現在のように全国チェーンの中古クラブ市場がなく、ましてやメルカリやヤフオクなど、クラブを安く購入できる環境がなかった。練習場も割高で、ビジターとして土日にラウンドすると2~3万円は覚悟しないといけない。ゴルフは高級な大人の遊びでした。なので、上野アメ横のゴルフショップでハーフセットを購入して、それほど練習もしないまま、安いパブリックの河川敷でデビューというのが精一杯でした。
どうやってボールを打つかは、ゴルフ雑誌やレッスンビデオを購入。なんとなくスイングをイメージして練習場に行けば、背後の打席の“自己流おじさん”が頼んでもいないのに上から目線で教えてくれる。

「トラック1台分のボールを打つまでコースに出るな」が定説。何㌧トラック分だよ、いったい(怒)。とにかくハードルの高い時代でした。
さて、現在はネット上にレッスン動画があふれ、子どもの頃からゴルフをしてきた同世代の仲間が懇切丁寧にコツを教えてくれます。ゴルフの指導法が確立され、お金を払えば、近所の練習場で若いレッスンプロがスイング動画を撮影して、分かりやすく教えてくれます。やる気さえあれば、かなり効率よくゴルフの基本が学べる時代になりました。
先日、筆者の職場の同僚が50歳にして念願のコースデビューを果たしました。3か月後に仕事上の付き合いでコンペに参加しなければいけないとのことで、ナビゲーターを依頼されたのです。
この方のスポーツ歴は、中学時代に野球部でレギュラー。身長170㌢で腕っ節が強そうな感じですが、ゴルフはまったくの初心者。
まずは会社近くの中古ショップに行き、アイアン(5番~PW)、ウエッジ2本(50度と56度)、ツーボールパター、ドライバー(ゼクシオ、10.5度)、ユーティリティー3本を購入。選んだものを併設のレンジで打てるお店だったので、早速、ピッチングでボールを打ってもらいました。
トーナメントなどは見たことがあるとはいえ、ボールを打つのは初めてとのこと。グリップ(ベースボールグリップ)と構え方を教えて、「気持ちよく振ってみて」とアドバイスすると、ダフりながらも1球目からボールが飛びました。
「気持ちいい~」。この1発で完全にはまったようです。次に何回か素振りをしてドライバーを振ると、大きなスライス。しかしながらインパクト音が素晴らしい。将来性を感じさせる思い切りの良さでした。
この日の練習場デビューを撮影して、翌日、本人に送信すると、「実際にボールを打つと思ったようなスイングにならないね」というので、知り合いのレッスンプロを紹介しました。何しろコンペまで3か月弱で、毎週、彼に付き合う時間がないので、プロには「ウエッジから7番まである程度、打てるようにスイングの基礎を教えてあげて」と頼みました。
このプロは「基本の30ヤードがスイングの基本」が信条。同僚にも「プロの言うことだけを信じてスイングの基本を身につけて」と伝えました。するとどうでしょう、週に2回のレッスンを6回終了したところで、見違えるようなアドレスとスイングになりました。
「プロから教わったのは正しいグリップとアドレス、それとスイングの始動だけ。この1か月、ウエッジと7番アイアンしか打っていない。それと素振り用バットを毎日、振っているよ。すごく青春している感じ」。ものすごく幸せそうで、こちらもうれしくなりました。

そしてやってきましたコースデビューの日。選んだのは千葉市内の9ホールゴルフ場。この日は天気に恵まれ混雑していましたが、コースには「デビュー戦で同伴者に迷惑をかけるので」と、無理を言ってツーサムをお願いしました。同僚はアプローチとパターの練習をまったくしていなかったので、スタート前に芝の上からのアプローチと練習グリーンでのパターを初体験。レンジでウエッジと得意の7番アイアンをしっかり打って、いざスタートです。
緊張のティーショットは思いっきりスライス。隣のコースからの2打目は得意のピッチング。あまり過干渉にならないよう、好きなように打ってもらいました。ラフに埋まったボールを打つのは初めてなのに、うまく当たったようです。ちゃんとフェアウエーに出して、残りが140ヤード。これも得意の7番アイアンでグリーン奥まで運びました。「よしよし3打でグリーン近くまで来たぞ」と本人もホッと一息。ところがここからがコースデビューあるある。4打目のアプローチをシャンク。5打目でピン横5㍍に乗せましたが、なんとここから4パット。記念すべき最初のホールは9という結果でした。
ゴルフは最初が肝心です。同僚に教えた心得は「どんなに難しい状況でもボールはあるがままに打つ(ノータッチ)」と「グリーン上の完全ホールアウト(OKなし)」。「きょうはゴルフの楽しさを感じて。マナーやルールはそのうち教えるから」と伝えました。
結果は9ホールでショット(アプローチ含む)34回、パット30回の計64ストローク。デビュー戦としてはまずまずではないでしょうか。本人も「ゴルフって気持ちいい。童心に帰ったみたい」と目を輝かせていました。
筆者のコースデビュー(24歳の時)は9ホールの河川敷でしたが、ひどいものでした。クラブはレンタル。練習もしないで無理やり会社の先輩に連れて行かれ、最初のホールで数回空振りして、やっと当たったと思ったらチョロ。「もういい、ボールが当たる短いアイアンだけでやれ」と言われ、グリーン周りからも行ったり来たりしていたら、先輩にボールを蹴られた挙げ句、「もういいよ。残りのホールは散歩でもしていろ」。わずか3ホールで強制終了です。初心者へのあまりにも無情な振る舞いに、ゴルフは二度とやらないと心に誓いました。
本来、コースデビューは一生の記憶に残る素晴らしいもの。思い出したくもないコースデビューを体験した筆者ですが、その後、27歳になって、幸せなコース再デビューを果たしました。ゴルフを知らずに人生を終えるのは悲しい。この素晴らしき生涯スポーツのナビゲーターになるのは光栄なこと。みなさんもゴルフの裾野を広げる意味でも、初心者にゴルフの素晴らしさを伝える良き先輩となってください。
時田 弘光
〜No Golf No Life〜
数年前まで真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。










