ゴルフが五輪競技である意味とは – 雑草リモートゴルファーの徒然日記㉔

新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない状況で、公道での聖火リレーや会場内でのトーチキスが行われ、東京五輪がいよいよ始まります。その是非についてはここでは触れませんが、今回は五輪競技としてのゴルフについて、少し歴史を振り返りたいと思います。

2016年のリオ五輪で男子がジャスティン・ローズ(英国)、女子は朴仁妃(韓国)がそれぞれ金メダルを獲得。とりわけローズとヘンリク・ステンソン(スウエーデン)との激闘は記憶に新しいところです。実はこの時にゴルフが初めて五輪競技に採用されたわけではありません。1896年にアテネで第1回の近代オリンピックが始まり、2回目の1900年パリ大会で、男女ともにゴルフ競技が行われています。しかし1904年のセントルイス大会では、男子ゴルフのみで女子は開催されませんでした。その男子ゴルフも1904年を最後に五輪競技として除外され、リオ五輪でようやく復活したわけです。

ネット上の文献を当たってみると、ゴルフの初代チャンピオンは男女ともに米国人で、男子がチャールズ・サンズ(Charles Sands)、女子がマーガレット・アボット(Margaret Abbott)でした。サンズ選手は、全米アマ2位という実力がありながら、テニスが本職だったそうで、1900年大会ではシングルス、ダブルス、ミックスダブルスに出場しています。

1990年パリ大会での女子ゴルフ競技の様子。アボット選手が9ホールを47ストロークで優勝した(Search for Margaret Abbottより)

一方、女子のアボット選手については、ある時点まで米五輪チームの正式メンバーとしての記録がなかったことなどから、本人はおろかだれもこの快挙を認識していなかったというのです。米国オリパラ委員会のサイトなどによると、当時23歳のアボット選手は、1900年

10月4日にパリ郊外の9ホールのゴルフ場を47ストロークでホールアウトして優勝したとあります。彼女はこの名誉を認識しないまま、1955年に77歳で亡くなりました。

彼女の快挙を世に知らしめたのは、フロリダ大学のポーラ・ウエルチ(Paula Welch)教授。五輪競技としてのゴルフを調査する中で、アボット選手にたどりついたそうです。同教授の記事「Search for Margaret Abbott」によると、アボット選手が五輪に出場したのは、たまたま芸術の勉強でパリに滞在しており、フランスゴルフ選手権にも出場していたため、母親と一緒に出場することになったという。ちなみに小説家の母親(Mary Abbott)は出場9人中7位。五輪史上、親子で同じ試合に出場したのは空前絶後とのこと。

そもそも1900年大会で女子が参加できたのは、テニス、セーリング、クロケット、乗馬、そしてゴルフの5競技。997人の参加者中、女子はわずかに22人でした。さらにこの年のオリンピックはパリ万博の関連イベントとして考えられていて、綱引きやハト競争なども競技に含まれていました。ゴルフ競技、いや、イベントに出場した女子選手の中には、タイトスカートにヒールだった方もいたそうです。 いかにも五輪がアマチュアの祭典であり、ゴルフが当時、上流階級の余暇であった時代のエピソードです。

多くのプロにとってオリンピックでの金メダルはどれほどの価値があるのだろうか

前回のリオ五輪で112年ぶりにゴルフが五輪競技として採用されました。その理由は、IOCによると、「ゴルフが急速な広がりを見せ世界的なスポーツとなった」から。つまり世界的なスポーツとなり、視聴率が期待できるから放映権料も期待できるというソロバン勘定でしょう。この大会には、ジカ熱を理由に日本の松山英樹選手を含むトッププロが出場を辞退

しました。そして5年後の今回は新型コロナウイルス感染症が世界を混乱に巻き込んでいます。

世界ランク1位のダスティン・ジョンソン(米国)は、PGAツアーのタイトなスケジュールを理由に3月に早々と東京五輪の欠場を表明。リー・ウエストウッド(英国)やアダム・スコット(豪州)も同じように欠場を決めています。4月に日本人として初めてマスターズを制した松山選手もコロナに感染しました。さすがに全英オープンへの出場は難しく、東京五輪後のプレイオフシリーズを考えれば、東京五輪出場も慎重にならざるを得ない状況です。

埼玉県川越市の霞ヶ関カンツリー倶楽部で開催される東京五輪ゴルフ競技の男子は今季最後のメジャーである全英オープン最終日の11日後の7月29日から4日間の日程で始まります。そして世界ゴルフ選手権のセントジュード招待が五輪からわずか4日後の8月5日から。莫大な賞金額を誇る2021フェデックスカップのプレイオフシリーズは8月19日のノーザントラストから3週に渡って開催されます。

一方の女子もメジャー大会であるフランスでのエヴィアン選手権の10日後に、女子五輪競技(8月4日~7日)が始まり、その12日後には、スコットランドで全英女子オープンが始まります。男子も女子も、ツアー終盤のプレイオフシリーズやメジャー大会を優先すれば、感染リスクや移動による隔離期間などのデメリットを回避するのは当然でしょう。

多くのプロが五輪競技としてのゴルフを敬遠するのは、彼らのキャリアの中で金メダルがどれほどの価値があるかではないでしょうか。

オリンピックは、アマチュアと平和の祭典としての意義を失い、巨額な放映権料やスポンサー収入を国際オリンピック委員会や関係者が奪い合う興業となってしまいました。そのメダルにどれほどの価値があるのでしょうか。すでに歴史ある4大メジャーを中心に世界のトーナメントが構築されているゴルフは、五輪競技である必要はないと思います。

(時田 弘光)

雑草リモートゴルファーの徒然日記 〜No Golf No Life〜
数年前まで真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。
現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。

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