世界のゴルフ界に大きな混乱をもたらしてきたリブゴルフ。この新ゴルフリーグの開幕戦からわずか1年で、米PGAツアー、欧州DPワールドツアー、そしてリブを財政支援するサウジアラビア政府のファンド・PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)の3団体が6月6日(米国時間)、統合することに合意したと発表しました。
サウジ資本の新ツアーについては、フィル・ミケルソン、ダスティン・ジョンソン、ブルックス・ケプカ(いずれも米国)といったメジャー覇者のビッグネームが巨額の移籍金を得て次々と移籍。この動きに対し、PGAはツアーカードを剥奪するなど厳しい措置を講じてきました。しかし、お互いを独占禁止法違反で訴えるなど法廷闘争を展開してきた新リーグとPGAの電撃統合に、選手だけでなく、スポンサーなど経済界や政治家、法曹関係者も含めて、さまざまな反応や臆測が飛び交いました。

~新組織はルマイヤン会長、モナハンCEO体制~
発表によると、PIFのヤセル・ルマイヤン会長が新たな統合組織の会長に就任し、PGAのジェイ・モナハン会長はその下でCEOとなる。しかし発表にはCEOとしてリブゴルフを精力的に引っ張ってきたグレッグ・ノーマン(豪)の姿はなく、発表の直前まで本人に知らされていなかったことも判明しています。ノーマンは交渉には関与せず、ごく一部の関係者だけで4月のマスターズ直後から極秘裏に交渉してきたといいます。
この発表を受け、ミケルソンは「なんて素晴らしい日だ」とツイート。全米オープンに優勝すればキャリアグランドスラムを達成するミケルソンにとって、まさに素晴らしいニュースでしょう。法廷闘争も終結するとの観測が広がり、多くの投資家はゴルフ業界にとって明るいニュースと受け止め、クラブメーカーなどの株価が上がったそうです。しかし、巨額な賞金と移籍額を受け取りツアーから去ったミケルソンらリブゴルファーの一方で、PGAに忠誠心を示して引き抜きを拒否した選手たちからは、モナハン会長への批判が噴出しました。
発表後に選手たちを前に統合の説明をしたモナハン会長に対し、ある選手は「偽善者」と非難。リブゴルフから移籍の誘いを受けながら残留したタイガー・ウッズ(米)や、リブ批判の急先鋒であるロリー・マキロイ(北アイルランド)にさえ、統合が近いことを知らせなかったことに、多くの選手が不信感を持ったようです。
選手たちに「いかなる批判も甘んじて受ける」と話したモナハン会長。心労から体調を崩し、入院していることが発表されました。
~和解の背景にPGAの財政問題~
ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙によると、両者が統合に至ったのは、PGAがリブとの闘争に財政的に疲弊し、統合の道を選んだとのこと。モナハン会長はWSJの取材に「金に糸目をつけず、外国政府と戦い続けることはできない。(PGAの)地位をできるだけ高めて合意できる最高のタイミングだった」と話しています。
一方のリブゴルフをみると、54ホールのチーム戦フォーマットが広く受け入れられたかといえば、必ずしもそうではありません。ビッグネームたちに大金を投下したものの、期待したほどの費用対効果は生まれていないように思えます。
PGAはリブとの法廷闘争にこれまで約5000万㌦も使い、選手引き留めのための賞金増額などで1億㌦もの資金を投入。PIFは約6000億㌦の資産を持ち、世界で最も潤沢な資金を持つファンドとみられています。
リブゴルフとの全面対決から早々に軌道修正を図ったPGAですが、統合までの課題は少なくありません。PGAとしてリブゴルフに出て行った選手たちの処遇をどうするのか。多くのスポンサーが、人権問題で批判されるサウジ資本が入ることをどう考えるのか。現在、PGAでプレーする選手もリブの大会に出場できるのか。あるいはリブゴルフは消滅するのか――。
PGAとの統合はいま一つ盛り上がらないリブゴルフにも朗報か“2024 We’ll have a full schedule just like we did this year”
— LIV Golf Enthusiast (@LIVGolfEnth) June 13, 2023
That came from Yasir? Yes 😏 https://t.co/0zoB9droMd
~PIFとの統合で新組織は課税対象に~
こんな動きもあります。カリフォルニア州選出で民主党のジョン・ガラメンディ下院議員は、PGAとリブゴルフとの統合を受け、非課税の恩恵を受けているPGAからその地位を剥奪する法案を提出しました。「プロスポーツに対する法人税非免除法」は、PGAツアーやその他プロスポーツリーグが連邦法人税の支払いを回避するために悪用してきた“税金の抜け穴”をなくすもの。年間1億ドルを超える企業収入を生み出すリーグを課税対象にする法案です。
ガラメンディ議員は声明を発表し、「サウジアラビア政府による人権侵害と2018年に起きたジャーナリストのジャマル・カショギ氏殺害事件をスポーツで洗い流すことは許されない」と述べました。さらにモナハン会長に対し「米国の象徴的スポーツリーグの乗っ取りを許可するという偽善を恥じるべきだ」と批判しました。
リブゴルフから移籍の誘いを受け、PGAに留まった日本の松山英樹選手は、15日から始まるロサンゼルスCCでの全米オープンを前に、今回の和解について「どうなるか。答えが出るのは5年後、10年後じゃないですかね」と慎重にコメント。果たして統合は順調に進むのでしょうか。病床のモナハン会長の手腕が問われますが、状況は不透明と言わざるをえません。
時田 弘光
~No Golf No Life~
以前は真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。
現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。
全盛期は7000㍎級のコースでクラチャンになったこともありますが、今はドライバーで200㍎の壁が見えてきました。









