LIV GOLFは何を目指すのか? – 雑草リモートゴルファーの徒然日記vol.63

サウジ資本の新ツアー「LIV GOLF」の動きが活発になっている。米PGAツアーは、同ツアーに参加したフィル・ミケルソン(米)やダスティン・ジョンソン(米)ら17人の無期限資格停止を発表。谷原秀人、香妻陣一郎、木下稜介の日本人選手も、ロンドンで48選手が参加して開催されたLIV GOLF開幕戦に出場しており、今後のPGAの対応や新ツアーの動きが注目されている。

元世界ランク1位のグレッグ・ノーマンがCEOを務めるLIV GOLFは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子率いるファンド(PIF)の投資を受け、設立された。同ファンドは石油だけでなく、今後、世界の大部分の再生可能エネルギー生産にも投資するとしており、ゴルフだけでなく、様々な分野に影響力を及ぼしている。

LIVが批判を浴びる理由は、サルマン皇太子が、ワシントンポストのコラムニストであるカショギ氏の暗殺(2018年10月)に関与したとする米諜報機関からの報告や、サウジ政府による数々の人権侵害が指摘されているため。プロゴルファーは個人事業主である以上、多くの賞金を出すツアーに参戦するのは当然だが、2001年9月11日に起きた同時多発テロの悲劇を経験している米国だけに、PGAツアー主催者を始め多くの記者たちが、ミケルソンらの行動に疑問を投げかけている。

<人権侵害と殺人を擁護するのか>

LIV開幕戦の翌週に全米オープン(6月16~19日)が行われたため、主催者の全米ゴルフ協会(USGA)は「LIVに参加して全米オープンに出場する選手を罰しない」と発表。一方でPGAツアーは17選手の無期限の資格停止を明らかにした。ジョンソンやケビン・ナ(米)らはメンバーシップを返上してLIVに参戦することを決めた。

こうした移籍選手たちに対し、カショギ氏の婚約者は「(LIVでプレーすることは)殺人を正当化すると同じ。彼らはメジャー大会への出場も禁止されるべき」とUSA TODAY紙に語っている。この批判に選手たちはどう答えるのか。

ミケルソンはLIV開幕戦前の記者会見で「もちろんサウジ政府の人権侵害は見過ごすべきではない。カショギ氏の件も認識しているし、あまりにもひどい。しかしLIV GOLFはゴルフというゲームに良い影響を与えると信じている」とLIVを擁護。多くの選手がPGAのメンバーシップを返上する一方、ミケルソンは「そのつもりはない」とし、あくまでもPGA執行部への嫌悪感が移籍の理由と示唆している。

また、ジョンソンは「自分と家族にとってベストな選択」と語りながらも、メジャー出場については「今後も出場を許可してもらえれば」と話す。実際のところ、メジャー出場には、過去のチャンピオンとしての出場か、ワールドランキングの順位によるため、ノーマンはLIV の試合にポイントを付与するよう公式世界ランクの運営者に申請している。

<3日間54ホールフォーマットは浸透するか>

ゴルフ競技の総本山R&Aは21日、17人の選手について来月開催される全英オープンへの出場を認めると発表。欧州のDPワールドツアーも移籍選手を資格停止にしない方針で、BMWインターナショナルへの出場を認めている。

最近の動きでは、4度のメジャー優勝を誇るブルックス・ケプカ(米)やアブラハム・アンサー(米)もLIVに移籍。全米オープン覇者のブライソン・デシャンボー(米)やマスターズ覇者のパトリック・リード(米)もオレゴン州ポートランドで開催されるLIVの第2戦に参加する予定だ。PGA側はあくまでもLIVへの対決姿勢を崩さないが、ノーマンが言うようにPGAツアーのスポンサーの多くがオイルマネーとつながっているのも事実。

これまでのツアーは、4日間72ホールが基本だが、LIVはショットガン方式の3日間54ホール。すでに峠の過ぎた有名選手たちが、賞金が補償されない4日間のタフな戦いより、予選落ちのない高額賞金のLIVに魅力を感じるのは当然と言えば当然だろう。この3日間54ホール、個人戦とチーム戦というフォーマットは、試合の中継方法などに工夫が必要だが、試合時間の短縮にもつながる。プロだけでなく一般アマチュアの試合にも適用すれば面白い。

LIV開幕戦で優勝したチャール・シュワーツェル(南ア)が獲得した賞金は個人戦とチーム戦を合わせて475万㌦(約6億4000万円)。13位に終わった木下でさえ、31万5000㌦(約4200万円)にもなる。高額賞金ばかりが話題となるが、LIV GOLFは何を目指しているのか、はっきりしない。今後、ある程度のベテラン選手が移籍するかもしれないが、PGAツアーが分裂するほどの勢力になるとは思えない。新フォーマットがファンに浸透するのか、いかにエキサイティングな試合を見せてくれるかが、新ツアー隆盛のカギだろう。

時田 弘光

~No Golf No Life~
数年前まで真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。飛距離に難のある57歳。

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