今季女子ツアー最終戦・JLPGAツアー選手権リコー杯(宮崎CC=6487ヤード、パー72)で、今季序盤に5勝を挙げた西郷真央(21)が、4日間で35オーバーという信じられないスコアで最下位となりました。「日本女子オープンの頃からティーショットに不安を感じ、振るのが怖かった」と話した西郷は、各メディアで「ドライバーイップス」と報じられました。
イップスはゴルフだけでなく、野球、サッカー、体操と、高度な緊張感の中で競技するスポーツすべてで報告されています。程度の差はあれ、アマチュアゴルファーでも「ショートパットが打てない」、「ドライバーのバックスイングが上がらない」など、イップスの症状でゴルフをやめてしまう方々もいます。基本的に物事を突き詰めるタイプの方がイップスとなるそうです。
Happy Birthday to Ian Baker-Finch, 1991 Champion Golfer of the Year at Royal Birkdale. pic.twitter.com/AWwVOvaVeo
— The Open (@TheOpen) October 24, 2016
今回は、日本ツアーでも3勝を挙げ、91年の全英オープンに優勝したイアン・ベーカーフィンチ(豪州)のイップスとの闘いを紹介します。
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91年の全英オープン3日目。ベーカーフィンチはロイヤル・バークデールのアウトで当時のレコードとなる29をマーク。最終ラウンドも最初の7ホールで5つのバーディーを奪う猛攻でメジャー初優勝を果たしました。
飛ばないが、フェアウエーを外さない。そして絶妙な寄せ―それが彼本来のゴルフでした。「自分に自信がなくて、スイングをいつも変えようと思っていた。ニック・ファルド(英)や同郷のグレグ・ノーマンに肩を並べられるなんて夢にも思っていなかった」。ところが彼らを抑えてメジャーチャンピオンになったことが、心の奥に潜んでいたエゴを目覚めさせたようです。
もっと偉大な選手になるためにどうすればいいか。ロングヒッターになるべきだ。そんな思いが、いつしか彼の持ち味だったコンパクトでスムーズなバックスイングを消し去り、スナップをきかせた醜いフック打ちに変えていきました。
全英優勝は多忙な時間をもたらしました。呼ばれたディナーにはすべて出向き、申し込まれた取材、講演、サインにすべて応じ、何千通のファンレターにすべて返事を書きました。「試合前に練習場にたどり着くだけで30分もかかった。ウオーミングアップの方法がすべて変わってしまった」。
思うようなプレーができず、92、93年と低迷が続きます。見るに見かねたプロ仲間は様々なアドバイスを送りました。ニック・プライスは「しっかりグリップしろ」、ファルドは「目をつぶって素振りを」、セベ・バレステロスは「できるだけ柔らかくボールを打て」、そしてノーマンに至っては「禅を学べ」。生真面目な彼はそのすべてに耳を傾けましたが状況は変わりませんでした。
【お知らせ】
— 日本女子プロゴルフ協会(JLPGA) (@JLPGA_official) December 1, 2022
12月11日(日)に開催される、国内プロゴルフツアーの対抗戦『Hitachi 3Tours Championship』の出場選手の変更がありましたのでお知らせいたします。
<JLPGAチーム出場選手>
西郷真央 → 堀琴音#JLPGA pic.twitter.com/Gwy9losAIF
「自分本来のスイングを筋肉が忘れてしまった」。スイング矯正のためのあらゆる努力を続けた。ひざの手術、視力矯正手術。当時、タイガー・ウッズやノーマンのコーチをしていたブッチ・ハーモンにも助けを求めました。もはや問題はスイングではなく、精神的な問題でした。
全英優勝以来、3年間で予選通過はわずか1度。95年のセントアンドリュースでの全英オープンでは、1番ホールのティーショットを思いっきり左に曲げ、最終18番のOBに打ち込んだ。そして97年の全英(ロイヤルトルーン)では、その初日にメジャー覇者としてはワーストの92をたたきました。
最終18番のフェアウエーに現れると、ベーカーフィンチはピンまで60ヤードのアプローチを前に恐怖をおぼえました。ダフるか、トップするか、シャンクするのか――自分を信じられなくなった37歳は、8番アイアンでの転がしを選択。前代未聞のスコアでホールアウトすると、チャンピオンルームにこもり妻とスイングコーチともに泣き崩れました。ベーカーフィンチは初日で棄権し、トーナメントゴルフから退きました。
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競技歴20年以上の几帳面なゴルファーほど罹患するというイップス。レベルは違いますが、筆者の友人にもスイングオタクの元ハンデ3がいます。彼は競技を始めて10年でクラブチャンピオンになりましたが、「もっと上を目指そう」とスイングの迷路にはまり、ドライバーイップスになりました。練習場では素晴らしいスイングで推定260ヤードを連発するのに、コースでは振り切れずに200ヤード前後。コースでのゴルフが面白くなくなり、競技ゴルフをやめました。今は練習場でボールを打つ日々です。諦めの境地に達した彼曰く「ああでもない、こうでもないとスイングをいじるのが楽しい。所詮、ゴルフは気晴らし。コースに行ってストレス抱えちゃ意味がない」。
我々アマチュアもあまり突き詰めずにほどほどエンジョイがいいのでしょうか。ちなみにベーカーフィンチは98年からESPNやCBS SPORTSのゴルフアナリストとなり、ゲーリー・プレーヤー(南ア)がインターナショナルチームのキャプテンを務めた3度のプレジデンツカップでアドバイザーを務めました。
時田 弘光
~No Golf No Life~
数年前まで真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。そろそろドライバーで200㍎の壁が見えてきた57歳。









