競技ゴルフのメンタルを考える(下)~競技ゴルフへの誘い⑪

身体能力と技術が拮抗する競技ゴルフの世界では、勝負を決するのはメンタル。

ものすごく深いテーマをシンプルにお伝えするために、前回はシニアになって勝ち星を重ねる白戸由香プロに「心技体」ではなく、「体技心」であり、「できることを毎日、少しずつ続ける努力」が自信につながり、緊張や恐怖といったメンタル面を克服できるという考え方を紹介しました。

今回は、スポーツ心理学の権威で、世界のトッププロのアドバイザーを務めてきたボブ・ロッテラ博士の著書などから、競技ゴルファーの実践に役立つ考え方を紹介しましょう。

<Stay in the present~過去や未来に囚われない>

プライベートコンペや月例競技で、こんなことはありませんか?

「きょうは調子いいな。ここまで6オーバー。よし、残り3ホールで1オーバーなら70台だ」と皮算用。最終ホールのティーグラウンドで「もう17オーバー。90は打ちたくない。このホールは絶対にパーで上がろう」と無理な目標設定をしてみたり…

こうした皮算用や目標設定は雑念を生むだけ。あと3ホール残っているのに、これまでのプレーを振り返る(過去)ことや、「絶対にパーを取ろう(未来)」などと考えることは、まさに今、正面にあるボールをどう打つか(現在)に集中していない証拠。

ロッテラ博士は「目の前の1打に集中する」ための考え方を紹介している

今、大事なことは、目の前のボールを打つこと。この1打をどういう弾道でフェアウエーに運ぶか。そしてその1打に集中するためには、ボールの後ろからターゲットをイメージし、アドレスに入り、スイングを開始するまでのルーティーンが必要です。

安定したショットを打つ上級者は決まったルーティーンを持っています。例えば、アドレスに入る前に「打ちます」と宣言したり、大きく深呼吸して「よしっ」と掛け声をかけることで、スイッチが入ります。

こうしたルーティーンを作ることで、余計なことを考えず、ショットへの集中力が高まります。

そしてそのショットがイメージ通りにならず、とんでもないミスショットになっても、イライラせず、「どうしてこうなったのか」などと原因の分析をしない。そう考えること自体、過去を振り返ること。すぐに次のショットをどう打つべきか、具体的に考えることです。

<Accept inevitable mistakes and misfortunes~ミスや不運を受け入れる>

ゴルフは思いがけないミスと予想不可能な自然現象と対峙するゲーム。せっかくドライバーをフェアウエーど真ん中に打ったのに、ボールはディボット跡に入っていた。ピンを指すキレキレのアイアンショットが突風に流され、スプリンクラーヘッドに当たってOBゾーンへ…。こうした不運にどう対処するか。

ゴルフを理解し、愛するゴルファーは、思いがけないミスや不運には、心の中で葛藤したり、激しく怒るのではなく、潔く受け止める(Acceptance)ことができます。

ロッテラ博士曰く。「ボールの行き先は完全にコントロールできないが、自らの姿勢、態度は制御できる。こういう状況を楽しみましょう。怒りやイライラは身体を硬直させ、スイングのリズムやスムーズさを狂わせる。ミスや不運を冷静に受け入れることで、粘り強いゴルファーに成長できるのです」。

「多くの人々は、受け入れることは精神的な強さでなく、諦めにつながる弱さではないかという文化の中で育っている。受け入れることは相手に屈することで、男らしくない。大志を抱くゴルファーほど、ミスを受け入れることができない」。

「ミスを受け入れること」は「現在に集中すること」。素晴らしいロングドライブを打ち、ピンに絡むようなアイアンショットを打っても、必要以上に興奮しない。それは過去に囚われること。反対に大きなミスショットをしても必要以上にがっかりしない。「なんでこんなミスをしたのか」と考えたり(過去)、「このミスで70台はダメか」(未来)と、がっかりするのも意味がない。

次のページ>>
Love your wedge and the putter~ウエッジとパターを愛せ