いざという時にミスするのはなぜか? – 雑草リモートゴルファーの徒然日記Round98

まさかの大逆転劇。勝負を分けたのはツアー16勝レジェンドのメンタルなのか、3日間ノーボギーでホールアウトした青木瀬令奈の集中力なのか――。

鹿児島で行われた国内女子ツアー第3戦・Tポイント×ENEOS ゴルフトーナメント(6419ヤード、パー72@鹿児島高牧カントリークラブ)最終日は、信じられない展開に。4打差の首位からスタートした上田桃子選手が、スタートから5連続バーディーを奪い、一時は後続に8打の大差をつけながら、後半に一気に崩れ、3位で終戦。同組の青木選手は通算17アンダーでツアー4勝目を挙げました。

上田選手の5連続バーディーは4番の20㌢、5番の30㌢とショットで稼いだもの。この時点で青木選手は「(上田選手にも)苦しい場面も来るかもしれない。自分にも後半伸ばせばチャンスはある」と、1打1打、自分のプレーに集中したといいます。青木選手のドライバー飛距離は220ヤード前後。上田選手がナイスショットすれば飛距離差は40ヤード以上にもなります。それでも、青木選手はコツコツとパーを重ねた。後半はリーダーボードを見なかったそうです。

最後まで1打に集中した青木選手のメンタルはさすが

すると上田選手は11番でグリーンサイドのバンカーショットをホームランしてダブルボギー。そして13番パー5でもグリーンサイドのバンカーで同じようなライから、今度は1回で脱出できずにダボ。11番のホームランが頭をよぎったのか、砂を深く取り過ぎたのでしょうか。一方、クールな表情を崩さない青木選手はこのホールをバーディーとし、一気に逆転しました。

これで上田選手は開幕戦のダイキンに続き、最終日最終盤でのミスで優勝を逃しました。昨年秋のTOTOジャパンクラシック、伊藤園レディスでも最終日を最終組で迎えての自滅。「後半に集中力が欠けていた」と振り返ったが、よほど精神力が強くなければ今後のトラウマになりそうな敗戦でした。

拙コラムでも以前に紹介したメンタルコーチ、ボブ・ロッテラ博士は「過去や未来にとらわれるな」と言います。 例えば勝負を決める1㍍のパーパット。「これぐらい短いの、イヤだな。よく外すんだよ」などとブツブツ言って、やたら時間をかけてアドレスした挙げ句、「あ~っ、届かない」と嘆くアマチュア。もちろんプロとはレベルは違うものの、失敗の原因は同じです。人間は過去の苦い思いを経験値として記憶にため込んでしまう動物なので、同じような状況下で余計なことを考えてしまう。

勝負の1打ほど何も考えない。外した過去と、外すかもしれない未来をイメージしない

1㍍がいやだなぁ~と考えるのは、「以前外した経験」(過去)と「また外すのではという不安」(未来)が同時に去来するから。とにかく何も考えない。目の前に1打を打つことだけを考えるのが正解だそうです。ここにメンタルの深さがあります。

毎週、トーナメントで優勝争いするトッププロほど、プレー後に会見に呼ばれ、プレーの内容を聞かれるので、不運なアクシデントも記憶に刷り込まれてしまうといいます。以前、賞金女王を獲得した若手女子プロが、「調子が悪くなってもプレー後の記者会見に呼ばれ、ミスした状況を聞かれるうちに、悪い状況から抜け出せなくなった」と話したことがあります。

ゴルフはミスをいかにリカバリーするかのゲーム。技術を磨くうえで、どういう状況でどういうミスをしたのか、プレー後に分析するのは大事ですが、試合中にそれを考え始めるとミスがミスを呼ぶ連鎖につながるそうです。スコアの壁で伸び悩んでいる上昇志向の方々には、滝に打たれながら無の境地に至るのも一興です。

時田 弘光

~No Golf No Life~
数年前まで真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。
現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。
そろそろドライバーで200㍎の壁が見えてきた57歳。

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