国内女子ツアーが3月2日のダイキンオーキッドレディス(沖縄・琉球ゴルフ倶楽部)で開幕するのを前に、昨シーズン未勝利に終わった申ジエ選手(韓国)がオーストラリアで優勝の美酒を味わいました。
豪州ツアーのバーロン・ヘッズで開催されたヴィックオープンで優勝。2月12日の最終日は強風が吹き荒れ、首位スタートの新鋭・カシー・ポーター(20)が79と崩れる一方、申選手は正確なショットと安定したショートゲームを武器に71でまとめ4日間計14アンダーで2021年7月の大東建託・いい部屋ネットレディス以来の優勝を手にしました。
「やっと勝てた。本当にうれしい」。申選手は1年半ぶりの優勝に笑顔を見せました。タフなコンディションになればなるほど、安定したプレーが光ります。
厳しいコンディションでのラウンドで経験と技術が光るベテランの申ジエCongratulations Jiyai Shin, your 2023 @VicOpenGolf champion! 👏 pic.twitter.com/qydLjinmu2
— WPGA Tour of Australasia (@WPGATour) February 12, 2023
米LPGAツアーのHPによると、この優勝が申選手にとって韓国女子ツアー(KLPGA)など世界のツアーで62勝目。34歳の若さですでにレジェンドです。
11歳の時にクラブを握った申選手は2006年からKLPGAツアーに参戦し、この年に3勝して賞金女王に。翌年には20歳で史上最多の9勝を挙げて連続女王に輝きました。2008年にもKLPGAで7勝を挙げ、3年連続の賞金女王に輝くとともに、メジャーの全英女子オープンに優勝。日本ツアーでもでも2勝(PRGRレディス、ミズノクラシック)を挙げ、JLPGAに入会しています。
そして米女子ツアー(LPGA)のメンバーとなった2009年に、いきなりツアー3勝を挙げ、新人賞と賞金女王に輝いています。快進撃はまだ止まりません。続く2010年には世界1位のロレーナ・オチョア(メキシコ)の引退に伴い、5月3日の世界ランクで1位となりました。
勢いに乗る申選手はこの間、後に世界1位となるヤニ・ツェン(台湾)を何度も最終日の競り合いで退け、2010年7月、メジャー昇格前のエビアンマスターズ最終日には、最終ホールのバーディーでモーガン・プレッセル(米)とレキシー・トンプソン(米)を1打差で振り切っての逆転優勝。2012年9月のキングスミル選手権では、ポーラ・クリーマー(米)とLPGA史上最長の9ホールに渡るプレーオフを演じて優勝するなど、その存在感は圧倒的でした。しかし、韓国にいる家族を大切にする申選手は2013年を最後にLPGAツアーから撤退。2014年から日本ツアーに専念しています。
今季のJLPGAでシードを保持するベテラン選手では、日本ツアーの勝利数だけでも申選手が26勝でトップ。以下、全美貞(韓国、25勝)、上田桃子(17勝)、テレサ・ルー(台湾、16勝)と続きます。シード選手の平均年齢は26.6歳と昨年より1歳若返る中で、申選手は作季未勝利とはいえ、賞金ランクは24試合で6258万円を稼ぎ18位、平均ストロークは70.87で7位と存在感を示しています。2019年には平均ストロークでツアー史上初の60台となる69.93を達成。2015年には81ホールノーボギーという日本記録も打ち立てました。ちなみに日本ツアーでの生涯獲得賞金は11億7634万円で歴代4位です。
米ツアー3勝の丸山茂樹プロのキャディーを務め、現在は申選手のバッグを担ぐ斎藤優希氏は申選手の強さについて、「試合会場ではショットよりもパター練習に多くの時間を割き、ピンを狙うショットでは、ピンまでの距離をしっかり打つ」とYouTubeなどで話しています。堅実なショートゲームがあるからこそ、ピンを狙う攻撃的なプレーができるのでしょう。
日本ツアーは近年、20歳代前半の若いスターたちが試合を賑わしているため、優勝争いしない限りは、スポットライトは当たりません。しかし、申選手が往年のパフォーマンスを発揮すれば、ツアーが盛り上がるのは間違いありません。16年以上のキャリアを経て申選手がいまだモチベーションを維持している申選手。「日本ツアーで賞金女王になる」という目標に向けて、素晴らしいプレーを期待したいものです。
時田 弘光
~No Golf No Life~
数年前まで真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。
現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。
そろそろドライバーで200㍎の壁が見えてきた57歳。