スーパーゴルフリーグとはいったい? – 雑草リモートゴルファーの徒然日記Round48

メジャー通算6勝のフィル・ミケルソン(米)が先月末、しばらく競技から離れることを発表しました。サウジアラビア資本のスーパーゴルフリーグ(SGL)構想に関連する自身の発言が米PGAツアーに波紋を及ぼしたことがその理由です。

世界のレフティーは、同構想が浮上した数年前から、米PGAツアー執行部への批判とともにSGLへの支持を表明していました。しかしSGLに参加すると噂されていた元世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン(米)や2020全米オープン王者のブライソン・デシャンボー(米)らがジェネシス招待の最終日、「今後もPGAを主戦場とする」などと表明したことで、新ツアー構想は一気に勢いを失いました。

PGAツアーを主戦場とするロリー・マキロイ(北アイルランド)は、自身もかなり前から新団体からの誘いを受けていたが「ツアーでは何試合行い、だれが参加するのか、放映権はどうなるのかなど何も決まっていない」と新リーグには批判的な立場を取ってきました。昨年末にはタイガー・ウッズ(米)もPGAツアーを支持する姿勢を明らかにしており、マスターズチャンプの松山英樹も含め世界ランキング20位以内で“移籍”を表明した選手はだれもいない状態です。

そもそもSGL構想とはどういうものでしょうか?

新リーグ構想は、5800億㌦もの資産を有するサウジアラビアの公的投資ファンドの支援を受けた新団体が画策するグローバルツアーです。1チーム4人構成で12チームが競う団体戦などと言われていますが、具体的なプランは決まっていません。この新団体は欧州ツアーとの提携も画策しましたが失敗に終わり(ヨーロピアンツアーはPGAと提携し、今年からDPワールドツアーにリブランド)、昨年から「リブゴルフ・インベストメント(LIV Golf Investment)」として新しいグローバルツアーの設立をもくろんでいます。

これまで多くの人権侵害で国際的に批判されているサウジ政府ですが、2019年からサウジ・インターナショナルを開催。2021年10月には、英国プレミアリーグサッカーのニューカッスル・ユナイテッドの株80%を取得しました。スポーツへの投資を行うことで、国際社会での評判を高めようという狙いがあります。

元世界No.1グレッグ・ノーマンの次の一手に目が離せない

米ゴルフダイジェスト誌は、こうしたサウジによる投資を、ナチスドイツが1936年夏季オリンピックを利用したプロパガンダになぞらえ、「スポーツウォッシング」として批判しています。PGAツアーのトッププロたちはすでに金銭的に恵まれた環境でプレーしているので、あえてサウジ資本の新ツアーに移籍するのはメリットがないと考えているようです。

PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏は、新ツアー構想が浮上した当初から「新リーグに参加する選手はPGAツアーの出場権資格を失う」と選手をけん制。フェデックスカップの賞金増額や、「プレイヤーインパクトプログラム」を昨年、制定し、コースでのパフォーマンスではなく、ファンからの人気が高い選手にボーナスが加算されました。

こうしたPGAの動きに対し、昨年秋にリブゴルフのCEOに就任した元世界ランク1位のグレッグ・ノーマン(豪)は、モナハン氏宛ての書簡を公表。「PGAツアーは個人事業主である選手たちを脅している(中略)選手たちは、どこのツアーでも自由にプレーする権利がある」と強調した。ノーマンは「これは始まりに過ぎない。決して終わりではない」と宣言しました。

ノーマンといえば、1990年代半ばに、メディア王ルパート・マードックのフォックススポーツとテレビ契約まで結び、「ワールドゴルフツアー」構想をぶちあげた前歴があります。今回、PGAツアーのスター選手の囲い込みに失敗したものの、アジアツアーにコミットする姿勢を見せています。いまやスポンサー離れが止まらない日本の男子ツアーにとって、ノーマンの提唱する新ツアーは、“渡りに船”となる可能性もあります。ノーマンの次の一手に目が離せません。

時田 弘光

~No Golf No Life~
数年前まで真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。飛距離に難のある56歳。

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