女子プロ協会の放映権主張は自然の流れ – 雑草リモートゴルファーの徒然日記㊵

GMOインターネットグループの熊谷正寿代表が、2022年の日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のツアーにスポンサードしないことを発表しました。熊谷代表はツイッターで「来年の主催は正式に辞退しました…2023年には女子ツアー最高額の3億円で主催するつもりだったので残念」と書き込みました。

熊谷代表は、同協会から「インターネット放送は有料しか認めない」旨の通達があったと明かし、「有料のインターネット放送のために、数億円もの主催者コストを負担できません。有料放送だけなら主催者を降ります」と同協会の方針に反発していました。GMOは今季、同ツアーで「GMP&サマンサカップ」を主催し、来季も継続の予定でした。

ここで放映権の問題についてみてみましょう。同協会は2017年から、それまでになかった「放映権」について、根本的な見直しについてテレビ各局を含め、スポンサーにも伝え、交渉を続けてきました。

JLPGAは2017年から放映権について、テレビ局、スポンサーとの間で交渉してきた

レジェンド・樋口久子さんが活躍した1970年代から、女子プロのトーナメント中継は、スポンサーによる“パッケージ方式”でした。スポンサーにトーナメントの賞金、開催費用、さらに放映してくれるテレビにCMを流す費用まですべて丸抱えで持ってもらいました。テレビ局は中継の合間にCMを流すことで、収益を得ていたわけです。黎明期にはテレビ局側が“放映権料”を支払ってまで放送する価値のあるコンテンツではなかったからです。

米女子ツアーで賞金女王に輝いた岡本綾子の登場、さらに不動裕理、宮里藍といった実力と人気を兼ね備えたスターたちが生まれる中で、視聴率が上がり、女子ゴルフツアーを中継する価値が上がってきたのです。さらにインターネットとスマホの拡充で、旧時代のテレビを頼ってのパッケージ方式よりも、インターネット会社に放映権を売って、有料で視聴者に観てもらうほうがWin-Winの関係が築けると協会側は考えたのでしょう。そこには地上波の凋落という背景も無視できません。

同協会が選んだパートナーが米国ディスカバリーチャンネルのGOLFTVです。実際に10月からの大会でインターネット配信を始めています。ネット中継の利点は、モバイルでいつでもどこでもライブ中継が楽しめることです。スポーツ中継の醍醐味は生中継。すでにネットで結果が分かっている録画の試合をテレビで見るのは味気ないものです。

GMOは「テレビ視聴率が下がり続けている状況で、インターネットを有料だけにしていたら、子供達はどうやってそのスポーツを見たら良いのか。協会は、歴史的に誤った判断をしている」と主張しています。今季のツアーではGMOだけでなく、ネットの無料放送をしてきた主催者があり、今後、様々な反応がありそうです。

協会はHPで今回の決断に至った背景として、「いま、時代を経て、国内はもちろん海外でも、ファンの皆様の応援をいただき、たくさんの選手が活躍しています。その選手たちの活躍が映像に映し出されたことで価値となり、それが正当に評価され、その評価が対価に反映される権利が放映権にあたります」とし、「頑張っている選手の価値が認められることにより発生する対価を、選手の素晴らしいパフォーマンスにつながるように投資し、それにより各大会の価値を高めることにつなげていきたい」と説明します。

ゴルフ以外のスポーツではすでにプロ野球、サッカーJリーグがすでに有料放送での中継となっています。ゴルフ中継でも、コアなゴルフファンはすでにBSや有料放送で海外の試合を楽しんでいると思います。スポンサーによるCM頼みで先細りになった地上波は、日本オープンなどメジャー大会を中継するNHKを除いて、スポーツ中継の醍醐味である生中継を怠り、時間差での編集中継に終始してきました。ある意味、女子プロ協会の方針転換は自然の流れであり、筆者はこれを否定しません。

女子プロ協会が放映権を主張するのは時代の流れ。いかに質の高いトーナメントを作ることができるか

女子プロに限らず、日本のプロトーナメントは長らく、海外のように入場料収入だけでは成り立たない希有な興業でした。1960年代の黎明期はダンロップ護謨が初めての国産ボール「ダンロップ65」を売るために、同社の大西久光氏が「それならゴルフの市場を拡大しよう」と、トーナメントを作り、プロアマ戦という形で、トーナメントを企業に売り込むパッケージ方式を導入しました。そこにはスポンサー丸抱えで、放映権という概念がありませんでした。

時代は変わり、毎年のように若いスター選手を輩出する女子トーナメントが、ネット時代に放映権を主張し、その経営地盤を固めようとしています。より質の高い試合を有料で楽しむのは当たり前の時代。同協会は、2022年度ツアーの公認競技では、地上波、BS、CS放送の放映権料を無料としています。果たして視聴者やスポンサーが女子ツアーを価値ある投資先として評価するかどうか。放映権料という新たな財源を得るJLPGAは、10年先を見据えたさらなる経営努力が求められます。

時田 弘光

~No Golf No Life~
数年前まで真剣に競技ライフを送ってきた雑草勤め人ゴルファー。現在はおひとりさまゴルフなどで、自堕落でゆるいラウンドを楽しんでいます。

関連キーワード


※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等を禁じます。

あわせて読みたい